コラム

【歴史館】TOTO:日本人の衛生意識が生んだ 魔法の蛇口

2020/6/19 15:00

【歴史館】TOTO:日本人の衛生意識が生んだ 魔法の蛇口

2020/6/19 15:00

 手を差し出すと水が自動で流れるセンサー式の水栓。公共の場ではもはや常識であるが、ウイルス感染症対策として住宅での導入も検討される機会が多くなったのではないだろうか。このような水栓は約30年前の1984年に「水栓に手を触れたくない」という人々の衛生意識と、無駄な水を出さないという節水ニーズに応え誕生した。

 そもそもバルブを電気で制御し、必要な分だけ水を流すシステムを小便器で開発していた。また赤外線センサーで人を検知し、水を流す機構も便器で開発されていた。これらの発想を水栓部位にも広げたのがきっかけとなる。技術こそあったものの、手だけを検知し流水、止水させることは困難であった。センサー部分の角度が0度の場合、止まりかけできらきらと透明な整流状態の水と手を間違えて検知してしまう。とはいえ角度を変えると今度は洗面ボウルの陶器まで検知してしまう等の課題を抱えていた。これらを解決できる丁度良い角度を導き出せたのは、構想から2年後のこと。晴れて84年に初代『アクアオート』が完成した。



 爆発的までとは言わずとも、年々採用件数は増加していった。しかしハンドルがなく、今までのものとは形状が異なるため、初めて見る人は勝手がわからず「水栓自体がハンドルなのか?」と水栓を回す人が多かった。結果、吐水口ががたつくとの苦情が絶えなかった。この光景を開発者が目にし、啓発の意も込めて、本体に手を洗うイラストと自動の文字をデザインした時期もあった。

 このように進化を遂げてきた自動水栓は2000年代から家庭にも進出してきた。現在は主力洗面商品に導入されるほどとなっている。“非接触”がトレンドの今、住宅でも標準化が一気に進むのかもしれない。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.65に掲載したものより抜粋しています。