コラム

【歴史館】チリウヒーター:女性の力仕事の軽減に貢献した 太陽熱温水器

2020/3/19 15:00

【歴史館】チリウヒーター:女性の力仕事の軽減に貢献した 太陽熱温水器

2020/3/19 15:00

 薪や藁を調達し、火を起こし、焚べ、沸かす。たった60年程前の湯沸かしは、薪や藁を燃やした火が熱源であることが常識だった。そして当時、この一連の作業は、女性の仕事とされていた。ガスや電気を利用しボタン一つで済むのは今の話。

 自動でお湯を沸かせないか、この負担を減らせないか、そこで着目されたのが、地球から遥か遠くにある大きな熱源、太陽熱の利用であった。1940年頃から各地の発明家が立ち上がったとされ、内側にタールを塗った木製の桶に水を張り、農作業中に太陽熱で温めておくという原始的な考えが、太陽熱利用の始まりとなる。

 その後、1957年にチリウヒーターがプラスチック製太陽熱温水器『KV』を発売し工業製品としてデビュー。しかし初代機は塩ビ製であったため、お湯によって変形するというトラブルに見舞われた。そこで当時出回り始めた塩ビ鋼板を採用した2代目を同年に開発。好調に人気を獲得した。



 一方で藻の発生や放熱によりお湯が冷めるなど新たな課題も見え始め、63年に自然循環式太陽熱温水器の原型となる『270型』を開発。集熱器にステンレスを使い、軽い凍結では破損しない仕組みとし、課題の解消、性能向上を実現した。「洗濯機がそうであったように、女性の力仕事を軽減できる画期的製品だった。同様の製品が他社からも出始め全国的な広まりを見せ始めた」(チリウヒーター広報担当)と振り返る。

 言葉の通り、80年代には設置件数350万件と一世を風靡し、長らく省エネにも貢献してきた。現在、屋根の上に設置する機器は太陽光発電が主流となっているものの、太陽熱利用のエネルギー変換効率は約40%と非常に高く、床暖房として活用できる製品も誕生している。太陽光発電との共存など、まだまだ可能性は秘めている。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.62に掲載したものより抜粋しています。