窓の外には青空。人々が交差する雑踏がみえる。
笑っているヒト、物想いに耽るヒト。優しい眼差し。
リアルな空間にはドラマがある。顔をあげてご覧なさいよ。画面の向こうに居る彼吾と確かにナニかの繋がりがあったとしても。
「其処は架空の産物であり、費やす時間を現実に向けた方が、より価値のある体験ではないか」
もはや止められぬ此の流れに警鐘を鳴らす知識人は斯様に囁き始めている。
便利になった。快適にはなった。数十年前には想像すら出来ない。世界を一変した。革新的テクノロジーが生活を豊かにした。
礎を築いたのは、今般、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰旭化成名誉フェローであり、ソニー(現在は村田製作所に事業譲渡)の量産技術だった。凡ゆるモノに組み込まれていった。無くてはならない存在。地球温暖化阻止、脱炭素化を図るべくエネルギー分野でも必須のソリューションであり、市場の賑わいはひとしお。
称賛に沸く中、水を指すようだが一方で、下を向いた文化。呑み込まれゆく感覚。何らかの副産物が世相を覆いつつあるのも事実。一度立ち止まって遠くを覗いてみたいと思うのは勘違いか。
生み出された価値ある技術を使いこなす。先人から受け継いだアツイ思想を継承していくとともに、倫理が求められる時代に我々は突入していくのではなかろうか。電車の中にヒトが居ない—。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.59に掲載したものより抜粋しています。
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