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【特集】スマエネ販売店売上高ランキング2019:太陽光縮小も蓄電池でプラ転

【特集】スマエネ販売店売上高ランキング2019:太陽光縮小も蓄電池でプラ転

 毎年恒例企画である『スマエネ販売ランキング』。対象者は、前回上位陣をはじめ、太陽光パネルメーカーの販売店や業界団体加盟企業、見積比較サイト登録店のほか、業界各社から名寄せした約1,700社。この独自リストから有力企業をピックアップし、2018年度のランキングを行った。西日本豪雨や北海道胆振東部地震など大規模災害が多発した18年度は、まさに有力販売店たちが先行して提案していた創蓄連携システムが活躍した年であったと言える。そんな同年度において、最も多くの販売実績を挙げたのはELJソーラーコーポレーションであった。次いで新日本住設、ECO信頼サービスが表彰台に上がった。住宅用太陽光システムの市場が縮小する中、防災を切り口に蓄電システムを積極的に提案したことで、いずれも売上規模拡大を実現している。住まいにレジリエンス性が一層求められる転換期となった18年度。どの企業が、どの様な戦略をもって活躍したのか。それではランキングの詳細に移ろう。

前回ワンツーが熾烈なトップ争い、7百万円差でELJが首位を死守

 本ランキングは例年、年間3,000棟規模を販売するELJソーラーコーポレーション(愛知、小谷謙二社長、以下ELJ)が不動の1位に君臨し続けている。結果としては、80億72百万円の実績を挙げた同社が首位となり、今回も変動はなかった。しかしその内容は前年とは大きく異なるものとなった。前回2位の新日本住設(兵庫、三尾真一郎社長)が17年度比1.5倍増となる80億65百万円と猛烈な追い上げを見せたのである。その差僅か7百万円。同年度の太陽光発電の平均容量は4.5kW、既築向けの平均価格は35.9万円であることから、あくまで目安ではあるものの1棟あたり161万円程度とするならば、実に4~5件の差。創蓄提案であれば、蓄電容量によっては2~3件程度でひっくり返りそうだ。例年他社の追随を許さずダントツを誇ったELJであるが、ここにきて、しのぎを削る好敵手が現れた格好となった。
 そんなELJの18年度の件数ベースの実績は、太陽光発電が2,900件、うち蓄電池とのセット販売は2,700件を占め、セット率は90%という水準に到達している。防災意識の高まりに加え、これまで東海・岡山・福岡の3エリアで実施していた催事販売を全国9ヶ所に拡げ、積極的なPRを行うことでセット率向上に繋げた。先程、新日本住設が1.5倍増と紹介したが、ELJについても17年度と比して10億円もの売上増を達成している。太陽光発電のシステム価格が下落する中で、創蓄提案によって、事業規模拡大を図っているのである。
 一方、前回調査では売上の殆どを太陽光発電が占めていた新日本住設は、同年度より本格的な蓄電池販売に乗り出した。訪販やネット販売などルートによって異なるがセット率は既に80%程度まで達している。猛スピードで肩を並べた経緯がここにあったわけだ。次回はどちらがトップに立つのか、予想できない領域まで差が縮まっている。
 続く3位争いでも、動きがあった。今回は福岡県に本社を置くECO信頼サービス(樋口龍二社長)が同順位についた。同社は現在約100名体制で、福岡、熊本、大分、宮崎、東京、北海道、沖縄の7拠点で展開。訪問営業や自社ショールームでの販売のほか、九州圏の大型商業施設で展示会を実施するなど催事販売にも力を入れている。熊本地震や九州地方で発生した豪雨などによる防災ニーズの高まりから、特に蓄電池販売が飛躍し、スマエネ機器の売上高は17年度比約3倍となる52億20百万円と急成長を遂げ、一気にトップ3に食い込んだ。
 一方、催事販売を中心に堅調に実績を積み上げてきたフォレストホームサービス(京都、伊神嘉哲社長)は、例年売上規模を拡大させており、今回も約7億円増の51億52百万円であったが、惜しくも4位となった。とは言え、件数ベースでは太陽光・蓄電池ともに年間1,500件ペースで展開しており、太陽光システムの件数部門ではトップ3に輝いた。山口博嗣専務取締役は「興味・関心を持つ消費者は少なくなく、潜在需要はある」と手応えを感じており「新しいアプローチで規模拡大を目指すとともに、日本の産業を盛り上げていきたい」と意気込みを語る。
 このほか、特筆すべき点としては、家電量販店では唯一、エディオン(久保允誉社長)がランクインした。本ランキングで名を連ねる企業とは、言わずもがな販売形態が全く異なる同社。提案型商材である太陽光発電や蓄電池を、店頭販売でありながらブランド力やノウハウをもって実績に繋げている。数ある量販店の中でも、エネルギー機器を購入できる店として定着している向きさえある。また前回ホームセンター部門でトップとなったカインズ(高家正行社長)は、今回圏外となった。同社は18年度より太陽光発電から蓄電池の販売に主軸を切り替えており、同年は取り扱い初年度であったため。広報部は「リフォーム部と家電部が統合し、新たな注力対象・戦略に移行した。エコ・環境という観点は今後深めていくべき要素と考えた上で、リフォーム事業を展開していく」としている。

太陽光縮小も蓄電池でカバー 、トップ30社市場シェアは1/3に

 トップ30の企業はそれぞれ独自の戦略、ノウハウをもって事業拡大を図っているが、太陽光+蓄電池の全体市場は昨年と同様の規模となっている。太陽光市場はシステム価格の下落や導入件数の減少から12.5%減の約2,100億円に縮小。一方で蓄電システムは、先述の通り、セット販売が増えたことから上昇基調にあり、市場金額も同22%増の1,000億円程度であったとみられる。スマエネ販売企業同様、市場全体としても、蓄電池の市場規模拡大がカバーしたことで17年度と同水準の規模となった。無論、レジリエンス性が求められ始めたとは言え、まだまだシステム価格が高い蓄電池は提案型商材であり、販売の多くはトップ30の企業が担っている。故に市場シェアは1/3にも到達し、業界を牽引していることがわかる。

蓄電池件数トップはELJ 次いで新日本住設、アローズが続く

 そんなスマエネ販売事業の中核を担いつつある蓄電池の件数ランキングでは、同じくELJや新日本住設など上位陣が名を連ねるが、蓄電池に特化するアローズコーポレーション(大阪、弓立昌輝社長、以下アローズ)が昨年同様、表彰台に上がった。累計1万件以上もの販売・施工実績を持つ同社だが、 BtoCの直販だけでなく、BtoBの卸販売も含めると18年度は約3,100台を販売した。昨今では直販は勿論、とりわけ卸販売が堅調に伸長し、19年度においては計8,000台を超す勢いで、商社ポジションとしての確立も見え始めている。販売方法は、飛び込み営業や催事販売等でスタートしたが、現在はアライアンス戦略に切り替えており、ハウスメーカーやビルダーをはじめ、スマエネ機器販売店やガス販売店などアライアンス先の既存客に対する販売を行っている。
 このほか、蓄電池有力企業の動向をピックアップすると、アローズと同様に、全国の大型商業施設での催事を展開するグリムスソーラー(東京、高橋純一社長)も、アライアンスモデルの確立に注力。業務提携を交わした大手住宅事業者タクトホームの子会社ティーアラウンドの提携先OB顧客等で太陽光発電や蓄電池に関心を示す案件に積極提案し、年間1,000件規模の実績を挙げた。加藤孝介取締役は「グループ内でのシナジーやアライアンスを強化し、自家消費市場を盛り上げていきたい」との意気込みを話していた。
また福岡県の住宅用太陽光販売の雄であるガリレオコーポレーション(百合永勝彦社長)は、17年9月に設立したリフォーム、リノベーションを手掛けるグループ会社の山王が軌道に乗り、同社向けの販売も含め蓄電池販売は1,000台規模に一気に到達。売上構成比の6割近くが蓄電システムの売上となっている。催事販売を中心に展開するが「今後は住宅のトータル提案の中で、蓄電システム販売を進めていく」(百合永社長)としている。
 18年度時点では、卒FITに対する提案は多くなかったようだが、そんな中、累計2万件もの太陽光発電ストックユーザーを保有するエイジー・ジャパン(千葉、長岡俊幸社長)は、アフターフォローを担うカスタマーサービスの一環でOB客を訪問する際に「アフターFITの対応策として採用頂いているケースは多かった」(長岡社長)とし、同年は約750件を販売した。
 2019年問題に対する提案は、事業拡大のチャンスであるものの「伸ばしていくべきは新規顧客の獲得」、「OB客は基本的にドアを開けてくれるため、営業力向上が見込みにくい」「新規開拓よりも手軽であるため、依存してしまう」など営業体制の面を鑑みたとき、一歩距離を置いて構える企業は多い。他方で、蓄電池は間違いなく太陽光ユーザーの方が売りやすく、争奪戦は必至。中にはユーザーに対し「販売業者が既に事業撤退しているため、当社でアフターフォローを引き受ける」といった嘘偽りのチラシをもって顧客を奪取する事例もあり「売電期間満了が少し先のユーザーに対しても迅速に回っておく必要がある」というジレンマが生じている。
 太陽光市場が縮小傾向にある中、蓄電池事業が売上を左右すると言っても過言ではない。次回ランキングでは、まさに卒FIT提案真っ只中であることから、本ランキングにも大きな変動がみられるかもしれない。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.59に掲載したものより抜粋しています。