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太陽光発電の廃棄問題:2036年に17~28万tの廃棄量試算も

2020/2/25 16:00

太陽光発電の廃棄問題:2036年に17~28万tの廃棄量試算も

2020/2/25 16:00

 太陽光発電は余剰電力買取制度が施行された09年より、住宅屋根に本格的に搭載され始めた。周知の通り、その後12年7月に固定価格買取制度(FIT)がスタートして以降は、10kW以上の小中規模からメガソーラーなど産業用の発電所が爆発的に普及した。19年9月末時点で住宅用は累計約260万件・11.2GW、産業用は約61万件・40.5GW導入されている(事業計画認定導入件数より)。CO2削減やレジリエンス性の強化などにも寄与する太陽光発電は、今後も推進していくべき機器であることは間違いないが、これに付随して取り組まなければならないのが廃棄対策である。NEDOが発表した資料によれば、住宅用は出力低下など機器の故障による撤去に加え、住宅寿命も排出要因として踏まえると、稼働13年目あたりから排出されると試算している。さらに産業用も含めた全体の推計では売電期間満了とともに大量撤去する・しない場合など複数シナリオを想定し、その中間のケースであっても2036年には17~28万tと、産廃の最終処分量に占める割合は1.7~2.7%(15年度比)に上るとしている。どの様な方向性で廃棄問題に取り組むのか、また解消すべき課題は何が挙げられるのか。

 廃棄問題等について議論・検討を行っている再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会の委員長を務める山地憲治RITE副理事長・研究所長と、同委員会の委員であり環境政策等でも知見を有する髙村ゆかり東京大学未来ビジョン研究センター教授の有識者二人に方向性や解消すべき課題を聞いた。FIT制度内で規制を設けるほか、稼働年数の長期化により廃棄量を軽減する等の意見が挙がった。

山地先生の回答①:「10kW以上は売電収入の一部を外部積立する」

 廃棄等費用の積立てについては、18年4月より義務化したが、経産省によれば、積立時期や費用水準は事業者の判断に委ねられることもあり、19年1月末時点で積立てを実施している事業者は2割以下という。「制度改革小委員会では、新たに外部積立を求める制度を起案した。全量売電で認定された設備は、まだ10年以上稼働しているものはない。そこで売電期間の後半10年間は売電価格から差し引くことで廃棄費用の積立を行う。積立金を管理する外部組織などを設け、しっかりと実施される様な施策を進めている。もちろん最終的に余剰金が出れば返還する」と語る。

山地先生の回答②:「分散電源化を確立する市場整備」

 「分散型電源(Distributed Energy Resources)として、如何に有効利用できるか。特に卒FIT電源を系統に点在するリソースとして上手く活用することで、ユーザーの経済性だけでなく電力ネットワークにおいても負荷平準化や防災力強化などに貢献し、ひいては稼働の長期化に繋がる。これを確立させるためには事業への参入促進が必要であり、『持続可能な電力システム構築小委員会』では、配電系統を維持・運用し、託送供給や電力量調整供給を行う配電事業者やDERの供給力を束ねて仲介する事業者(アグリゲーター)に対してライセンス制度を導入し、ルールを構築することで参入を促す方向で検討を進めている」

髙村先生の回答①:「ストック住宅が評価される環境へ」

 「住宅に太陽光発電を搭載してその電気を使うと、環境性はもちろん、電気代の支払いを安くできる経済性の向上、さらにレジリエンスの強化にも繋がる。今ではZEHという考え方もかなり普及し、住まいには快適性や健康への増進などの価値も付帯されている。この点が既存の住宅(中古住宅)でもしっかりと評価される市場となれば、太陽光発電はより普及することとなる。表示や格付けの制度などを活用しエビデンスに基づいた居住中の“ランニングコスト”、環境性、快適さが不動産選択の一つの要素となるような環境を整備していく必要がある」

髙村先生の回答②:「非FIT電源や屋根置き太陽光の廃棄対応も必要」

 今回、委員会で議論した外部積立制度は、10kW以上のFIT認定設備を対象としているが「今後、自家消費モデルなどFITに頼らない案件も増加していくとみられる。また住宅用、屋根置き太陽光は対象外となり、積立はユーザーの判断に委ねられる。これら対象となっていない設備を含めて、太陽光発電設備の所有者や管理者に対し適正に廃棄、リサイクルする義務を課すなどの施策が必要だ」と語る。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.61に掲載したものより抜粋しています。