コラム

【歴史館】大和ハウス工業:黎明期のプレハブ住宅

2019/10/20 15:00

【歴史館】大和ハウス工業:黎明期のプレハブ住宅

2019/10/20 15:00

 この言葉は、接頭語として「あらかじめ」「前の」などを表す『pre』と「組み立てる」を意味する『fabricate』を合わせた『prefabrication』の略で、カタカナ語では何となく呼び捨て感のある言い方になるが「プレハブ」または「プレファブ」と読む。語義の通り、予め工場で部材を作り、それを現場で組み立てる生産方式である。

 我が国では昭和30年頃から、低層の組み立て式住宅、仮設の校舎、プレキャストコンクリートによる中層の共同住宅などの総称として漠然と使われてきたという。発話後に続く単語として例えば「小屋」が連想されるように、どこか頼りない印象がないだろうか。実際にそうだったようで仮設的イメージを払拭せんがため、公には「工業化住宅」「工場生産住宅」等と称されてきた。

 この方が確かにロボっぽくて「高度な製造技術を用いた」「性能が高いかもしれない」といったテイストになる。ほぼニアリーで意味は一緒なのだが、漢字の硬さ、安定感というか、キッチリした感には驚かせられる。アメリカでは戦時の「応急住宅」としてこの語が使われていたことにも遠因があると考えられ「Industrialized House」と書く場合があるなど、語源だけ深堀してみても興味深い。

 建築史的には昭和初期、ドイツのグロピウスが提案した乾式組立構造が日本に紹介されたことが現在の鉄骨系のルーツといわれている。その後、木質やコンクリート系に応用されていく。「黎明期のプレハブ住宅」として「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」には59年に商品化された大和ハウス工業の「ミゼットハウス」が登録されている。戦後復興期、深刻な住宅不足の解消に伴い発展してきたが、今や一般的には住宅供給を担う大手・中堅ハウスメーカーが手掛ける建築・産業といった印象になるだろうか。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.57に掲載したものより抜粋しています。