対談

【対談】河村電器産業:企業トップが語るカワムラの未来、新時代の安全・安心は「アクティブ・ディフェンス」で

2019/8/15 17:00

【対談】河村電器産業:企業トップが語るカワムラの未来、新時代の安全・安心は「アクティブ・ディフェンス」で

2019/8/15 17:00

 創業100年という長い歴史は如何に構築されたのか。今後の将来像はどのように描かれているのか。事業経営を担う河村会長と水野社長が“カワムラ”の過去・現在・未来を語り尽くす。

―創業100年の事業展開を教えてください。

河村会長 我が社は大正8年にスタートした。創業者は陶器の職人であった。京都に修行へ出た際に乗車した市電にインスピレーションを受け「電気・エネルギーの将来性」を見出した。電気と陶器の技術を融合させる事業を目指し愛知県瀬戸市で創業した。当初は絶縁材料としての陶磁器販売であったが、徐々に生産体制を整えていった。そこから我が社は電路に対する時々のニーズや問題点にあわせて機能を拡充することで事業を行ってきた。創業当初は「絶縁」であったがインフラの発達に伴い「電気の保護→遮断→配電→測定→監視→制御」へと広げていった。

―長い歴史を築いていく上で重要だったことは何ですか?

河村会長 社会のニーズや問題点にあわせて機能を拡充するという事業活動とやはり「人」の部分。今の時代になっても代が変わってもその想いが、時々の時代に沿って今でも続いている。基本的には家族的な経営と電気エネルギーの機能の追求が我が社のコンセプトである。

―では、現在のエネルギーや電気といった市場環境をどのように分析していますか?

水野社長 現代社会は電気やエネルギーの使い方が過渡期にある。IoTやAIが発達していくほど保護するものも、そのやり方も変わっていき、複合的に新たなリスクが生まれてくるでしょう。これらの変化に我々は技術と誠意をもって貢献する企業であり続けなければならない。ハード面だけで対応できていたことが出来なくなってくる。すると電気の保護だけでなく「予測」「診断」という機能も含め一歩踏み込んだ展開が必要ではないかと考えています。

―踏み込んだ展開とは具体的に どのようなコトですか?

水野社長 創業100周年という節目に、我々に課された「使命」は何かを議論し「アクティブ・ディフェンス」というミッションを掲げました。時代を読み、先へ、先へと予測していく。何かが起きてから考えるのではなく「起こさせないこと」を目指していくというものです。「ディフェンス」というとネガティブなイメージがあると思いますが、社会のリスクを「先取り」し、それを回避していく道を我々が切り開く。ネガティブなイメージではなく、むしろポジティブな意味での「ディフェンス」です。新しい時代の新たな不安やリスクに対応できるように。これが次の100年に向けた我々の歩んでいく方向性であると考えています。

―社会に対し何が貢献できるのかを主軸に置いている訳ですね。

河村会長 最近のビジネス傾向として「大きな成功」を事業活動のテーマとしている企業が多いように見受けられる。短期間で企業を転売し大きな利益を掴むというのがトレンドとしてある。我々の事業領域は、それとは全く異なるところ。基本的に電気は社会インフラであるため革新的なことが出来る訳ではない。一方で社会にとって無くてはならないもの。つまり、継続して事業活動をするというのが我々の使命にもなる。逆に言うと「大きな成功」を我々は企業として求めるのではなく、その時々の、少なくとも電気に関する社会的リスクみたいなものをどうやって先にキャッチして問題解決をしていくかという点に企業としての存在意義があると考えている。

―なるほど。今後の展開について、最後に一言お願いします。

河村会長 製品主導の事業展開は成功する確率が低いと思う。むしろ、世の中の変化。例えば、人手不足なら我々は何が貢献できるだろうか。人の暮らしが情報で繋がったとき、さらにより快適になるため我々は何を提案できるか。少子高齢化に対しては?など社会に何か貢献出来ることはあるだろうかという視点で商品をみていったほうが良いのではないかと考えている。我々のもっている基本的な技術と社会的課題の掛け合わせも重要。「こんな商品を作ろう」という前に、世の中にどんなリスクが潜在・顕在的にあるのかを注視していきたい。

水野社長 今迄はハードで守れていたかもしれない。しかし、これからはハードだけでは防げない新たなリスクにも立ち向かっていかなければならない。チャレンジし続けなくてはならない訳です。とはいえ、現代社会に於いて、我が社だけで全てを包括していくというのは難しい。考え方や理念は一緒であるが、違う技術を持ったところと新たな提案を世の中に打ち出していくことが今後ますます重要になってくると思う。今まで全くお付き合いのなかった業界とも積極的に連携していきたい。そうすることで「アクティブ・ディフェンス」というミッションを実現させたいと思います。

―まさに“攻め”のディフェンスですね。ありがとうございました。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.54に掲載したものより抜粋しています。