対談

【特集】北海道先進ビルダーが語る ZEH普及の課題と実態

【特集】北海道先進ビルダーが語る ZEH普及の課題と実態

 P.V.ソーラーハウス協会主催『自家消費型ZEHセミナー』in札幌の最終日には北海道の先進ビルダー4社がZEH普及の課題と実態について語り合った。
※敬称略、最初のみ会社名を記載

ZEH普及に対する取り組みは?

藤城建設・川内 太陽光発電システム自体の取り扱いは以前から取り組んでいたが搭載0棟という時期が続いていた。一方で地球環境問題の解決、エネルギーの自給自足を推進しなければならないと考え、徐々に展開していくようになった。成功モデルを積み重ね益々の向上を目指したい。

キクザワ・菊澤   弊社は「UA値0.25以下を保証」を謳い文句にしているため比較的入りやすかった。太陽光を載せればZEHになるということもあったが、業界に生き残る為の危機感、地球環境問題の危機感。この二つのキッカケから取り組むに至った。今後はデザイン性を高めた仕様を提供していきたい。

ホーム創建・三品  時代の流れを鑑み全社的に「ZEH販売に向けた仕組みをつくる」ということで動き出した。小さな商圏であるため、他社との差別化、競争優位を確立するのは難しいが一般のお客様が「光熱費に関してならばホーム創建」といった流れを作っているところ。仕組みを整え推進していきたい。

住研ハウス・小林  住宅市場の中でZEHは必須であると考えているが、当初のキッカケは拘りのあるお客様から「ZEHを建てたい」というご要望を頂いたものだった。それまで「ゼッチ」という言葉を認識していなかった。比率はまだ数%ではあるが、引き上げていきたいと考えている。

比率向上に向けた問題・課題は?

川内   現場は太陽光があるだけで大変になってしまう。一方で営業は受注を取ってくるだけといった風潮になりがち。実際は会社全体の売上貢献にはなっているが、マージン制をもう少し整え、個人的には全て「見える化」してしまいたい。営業、現場、設計・申請関係の担当に対して配分を明瞭にすることで解決に至るのではないかと考えている。

菊澤  ZEH率向上にむけた意識統一はできている。屋根の大きさ、積載量などを算出し、見積作成するシステムづくりはできたが、お客様へ説明するツールがまだ社内的に統一されたものがない。そこがネックに感じている。

三品  問題と捉えている内容は2つ。営業成果としてはZEHであろうと標準物件であろうと1棟は1棟という感覚がある。営業マンは数字の世界であるため、少しでも早く・多く受注したいという受注目標が影響している。また商談ステップのなかにZEHに対する仕組みを管理者側が作り切れていないと感じている。

小林  お客様に共感して頂けるような商品化が出来ていないところが一番。営業マンとしては「1棟は1棟」という考え方なので、なかなか「ZEHを売りたい」という気持ちまで押し上げられていない。現場と営業の意識に差がある?

川内  個人的には営業が受注してきた全ての利益をチーム内で分配をしたほうが、仲間意識や営業マンへの感謝の想いも高まるかと感じる。太陽光設置案件を受注するチームとしないチームがあるので、特別手当という形を取った方が、従業員が納得できるかもしれない。

三品   マージン制度のような考え方が本州には多いようだが道内は意外と少ないと感じる。「営業が偉い訳ではない」が基本的な考え方だが、ZEH案件の受注に際し、個人に対してではなくチームに手当を支給するという取り組みも行っていた。現状を打破するにはやはり少し刺激が必要なのかもしれないと感じている。

小林  特別手当といった制度が出来れば、社員全員がZEH普及に向けて動く目標の一つになるので良いかとは思う。ただ、どちらかというとそれ以前の問題の方が重要で、お客様に対しての商品化も課題としてはある。

一方で太陽光の予算問題は?

川内  簡単にシミュレーションできるソフトがあり、住宅ローンの話も含めて太陽光を搭載すればメリットがあることを伝えられている営業マンのZEH受注率は高い。一方で、そもそも説明しない場合はほぼゼロ受注という印象がある。また、あまりにも太陽光について他人事の部分が多いかと感じる。自分事にするためにはどうしていくのが良いのだろうというのを毎度考えているところ。それを解決するために軸となる人材、太陽光に特化した人間を置いた方がいいと感じている。

菊澤   あくまでもお客様の予算ではあるが独自ソフトで計算し「どれくらいの収益があります」といった説明をしている。限度いっぱいでローンを組まれるお客様は難しいが、そうでなければ納得や理解は得られ問題は生じない。

三品  太陽光の損益構造といった勉強会を開催し現場の知識レベルも上がってきている。商品仕入れ的にはまずまずの価格で出せる状態である一方、全社的にそれが強みという認識が薄く、お客様に対してアプローチできていない。このあたりの工夫と努力がまだまだ必要。ただ、ターゲット層もある程度見直さなくてはいけないとは感じる。そもそも自己資金がないという段階の場合もある。

議論を踏まえ、今後の方針は?

小林  マイホームがZEH仕様であり、実際に住み始めてみると快適であるだけでなく「家が収入を生む」ということを体感している。家族の満足度も高い。会社としても業績向上にもつながることから、販促ツールやV2Hを採用したLCCM住宅といった自立型のモデルハウスなどを整え、お客様にも見て・体験していただけるよう肉付けし普及に努めたい。

三品  戦略的に他部門とのグループを作っている。設計責任者だけでなく、営業、工事、総務の女性スタッフも主婦目線といった具合に。他部門との交流を通し、新商品開発を進めていきたい。お客様に協力をいただき説明用DVDも作成した。快適性だけでなく光熱費の削減などに大きく貢献できる点を伝えていきたい。

菊澤  まだまだ実績が少ない。お客様の実測データを蓄積させ机上論だけでなく実際の経験値、データとしてお客様にアピールできるシステムづくりをしていきたい。これまで建築してきたお客様の満足度は高く「失敗した」という感想はない。「こうして良かった」という笑顔のために普及させていきたい。

川内   会社の業績向上という面もあるが、やはりお客様の幸福度、満足度。建築の魅力はもっとお金以外にもあるかとは思うが、生活者の心配事が緩和され安心した笑顔がみられるのが最大のメリットではないか。社内体制の構築もさることながら、ひとつひとつ課題を解決し普及推進を担っていきたい。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.62に掲載したものより抜粋しています。