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【News Release】エア・ウォーター北海道:世界初の実用化・事業化に向けた「バイオガスからメタノールとギ酸を製造する光化学プラント」の開発・実働について

【News Release】エア・ウォーター北海道:世界初の実用化・事業化に向けた「バイオガスからメタノールとギ酸を製造する光化学プラント」の開発・実働について

発表日:2021年02月09日
発表者:エア・ウォーター北海道
表 題:世界初の実用化・事業化に向けた「バイオガスからメタノールとギ酸を製造する光化学プラント」の開発・実働について

 これまで大阪大学と北海道興部町は、バイオガス※1の活用技術の開発を目指して、2019年6月26日に連携協定を締結し、興部町の興部北興バイオガスプラント及びオホーツク農業科学研究センターにて協議・試験を重ねてきましたが、これまでの予備検討の結果を受けて、「バイオガスからメタノール※2とギ酸※3を製造する光化学プラント」の実用化に向け、新たに民間企業2社であるエア・ウォーター北海道株式会社と岩田地崎建設株式会社を加えて、このたび4社連携協定の締結を行いました。

 エア・ウォーター北海道はバイオメタンをメタノール・ギ酸へ化学変換する、世界初の光化学パイロットプラントの設計・反応制御及びシステムの最適化を担当し、岩田地崎建設株式会社は、パイロットプラントに適した上屋の設計及び周辺環境制御技術の開発を担当します。今後、大阪大学の技術を用いて、事業化にあたっては「オール北海道」の体制で、より強力な関係のもと、研究の実用化にスピード感を持って取り組んでまいります。

 本実施体制のもと、研究開発事業を継続し、2030年度以降の実用化を視野に入れ、最終的には「カーボンニュートラル循環型酪農システム」の構築、日本国内全体への展開を目指してまいります。

4者共同研究契約に至った背景

 北海道は一大生乳生産地であり、生乳生産量は400万トンを超え全国の約半分を誇ります。適切なふん尿処理による良質な飼料生産の為、北海道中でバイオガスプラントの新設が計画されています。固定価格買取制度(FIT)※4を用いた売電による運営モデルを主としているバイオガスプラントは、FIT売電期間終了後にも継続して収益を上げるための運営方法の検討が迫られています。例えば、バイオガスを電気以外のエネルギーに変換する場合、バイオガスをそのまま利用するよりも、含まれているメタン※5を液化することによってエネルギーを高密度化でき、運搬が容易となり貯蔵も可能となります。しかしながら、バイオガスの主成分のメタンガスを液体燃料に変換する技術は、化学反応の中で最も難しい反応とされてきました。

 大阪大学の大久保教授(専門:光化学)の研究グループでは、2018年に除菌消臭剤の有効成分として知られている二酸化塩素とメタンガスを特殊な溶液(フルオラス溶媒※6)に溶かし紫外線を当てると、液体燃料のメタノールとギ酸に常温・常圧で変換する高難易度である反応を見いだしました。2019年には大阪大学と興部町の間で2者連携協定を締結し、家畜ふん尿から生産されるバイオガスを液体燃料に変換する技術開発を共同で推進し、1年間の研究開発を経て、バイオ由来のメタノールとギ酸を得ることに世界で初めて成功しています。

4者共同研究契約の内容

 この技術を用いた事業化に向けて、エネルギー地産地消型小型乾式バイオガスプラントの開発に成功するなど、豊富なバイオガスコンサル・プラントの設計・施工実績を有するエア・ウォーター北海道が、光化学パイロットプラントの設計およびシステムの最適化の研究テーマに取り組みます。岩田地崎建設は、北海道内のバイオガスプラントの上屋設計および建設、研究開発の実績を生かし、反応へ与える環境条件を考慮したパイロットプラントの上屋設計に関する研究テーマに取り組みます。興部町、大阪大学の間で2019年6月に締結した2者連携協定に、このたび民間会社2社が参画し産官学4者の強力な連携のもと、早期の事業化・実用化を目指します。4者共同研究では、興部町内の興部北興バイオガスプラントを研究フィールドとしてバイオガスから液体燃料を製造するシステムの構築を目指します。

 本技術開発が成功すると、メタノールを燃料としたプラントの自立運転が可能となり、FITに頼らないバイオガスプラントの運営が実現し、酪農由来のバイオマスの適切な処理につながります。余剰となったメタノールは外部販売でき、国内自給率ゼロだったメタノールの国内生産を可能にします。興部町では、町内のEVステーションの設置、メタノール由来電気の公用車、バス、農業関係車両等へ供給する構想があり、地産地消可能なメタノールエネルギーの利活用を強力に進めます。
一方、ギ酸は良質な飼料用サイレージ※7を製造するための添加剤として広く使用されており、酪農地域で広域に利用できる有用な物質です。また、ギ酸は水素を効率よく貯蔵・輸送できる「水素キャリア」として利用が急速に進みつつあり、将来的に水素製造原料として広く利用することが期待されます。

 本技術を興部町全体に普及した場合には、メタノール1,100トン/年、ギ酸5,300トン/年、水素210万N㎥/年が製造でき、これらにより町内公共施設、水産加工施設のエネルギーの全量、乳業工場の65%のエネルギー、町内でサイレージ添加剤として使用しているギ酸の全量を代替することができます。
本技術を導入した場合の興部町全体の温室効果ガス削減量は26,000トン-CO2等量にも上り、経済効果は35億円に達すると推算されます。本技術開発後は、2030年度以降の実用化を見据えています。本格的な研究開発を継続し、エネルギーの地産地消を基本とした「カーボンニュートラル循環型酪農システム」の確立により全国展開を目指します。

SDGsへの取り組み
 当研究グループは、国連サミットで採択された2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを進めています。 本技術開発の取り組みは、下記の開発目標に該当します。

7 :エネルギーをみんなに そしてクリーンに
9 :産業と技術革新の基盤をつくろう
11:住み続けられるまちづくりを
12:つくる責任 つかう責任
13:気候変動に具体的な対策を
14:海の豊かさを守ろう
15:陸の豊かさも守ろう
17:パートナーシップで目標を達成しよう

〔公式ページ〕
世界初の実用化・事業化に向けた「バイオガスからメタノールとギ酸を製造する光化学プラント」の開発・実働について
※掲載テキストは発表情報の全文または一部抜粋です。元となるプレスリリースは発表元による発表当時のものであり、最新情報とは異なる場合があります。※詳細情報は公式ページをご参照ください