ZEH・LCCM

業界横断的な連携と 消費者目線でスマートな住宅を

2019/11/1 18:00

業界横断的な連携と 消費者目線でスマートな住宅を

2019/11/1 18:00

 ZEH普及が叫ばれるなか、業界全体は一体どこへ向かっているのか。総合資源エネルギー調査会 省エネルギー小委員会の委員長を務める住環境計画研究所の中上会長に省エネ政策の現状と今後の方向性・全体像を訊いてみた。

省エネ小委員会はどのような組織・ワーキンググループ(WG)ですか?

 省エネ小委員会は経済産業省・資源エネルギー庁に設置されている総合資源エネルギー調査会の構成組織。「省エネルギー政策の基本的方向性に関する審議」「適正な省エネルギー基準の在り方に関する審議」を行っている諮問機関です。日本の省エネ政策を振り返ると1973年のオイルショックに遡ることになりますが『省エネ法』(79年)の制定以降、長きに渡り続く議論の流れを継承しているのが同委員会。簡単に表現すると、我が国の省エネに関する全体の方向性を定めていくことが大きな役割となります。関連法案の審議にも大きく関わっています。対象範囲は住宅・建築だけではなく産業・民生(業務・家庭)・運輸各部門と幅広く消費効率の向上を追究しています。「省エネ」という用語は単に何かを削減する、節電するといった意味ではありません。「省エネ法」の正式名称は「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」です。つまり、削減に加えエネルギーを最適に使用していくという視点が内包されています。無論、すべての分野に於いて。直近ではZEH・ZEBはもちろんのこと、トップランナー制度の再設計や表示制度の活用促進、電力需要の在り方、建築物省エネ法に関する議論を行っています。

現状のエネルギー消費の動向を如何に分析されていますか?

 高度経済成長に伴い実質GDPが73年比で約2.6倍となると同時に、最終エネルギー消費量は全体で同1.2倍、家庭部門は約2倍と増加傾向にあります。他方で、東日本大震災以降、エネルギー需給問題に対する関心が高まっています。世界的にも脱炭素化の潮流があるのは周知の事実。対策は喫緊の課題と言えます。これらの環境変化に伴い使用量の抑制だけでなくピークカットにどのように対応するかなど検討事項が複雑になってきています。舵取りは難しい。しかしながら、本質を見失ってはならないと考えています。エネルギーはすぐに転換できるというものでもなく、時間を要します。

ではZEH普及・促進にあたり必要な考え方とは?

 この「省エネ」という観点からするとZEHも全体の一要素に過ぎません。無論、個社がひとつのテーマに対し尽力していくことは重要ですが、俯瞰力が必要となります。抽象的ですが、点が線となり面となります。異業種との連携が大切です。この観点を踏襲すれば住み手、消費者目線も汲み取れるでしょう。例えば「環境」「エネルギー」「エコ」といったテーマだけに興味・関心があるというヒトがどれほどいるでしょうか。確かに経済メリットがあり、地球温暖化対策にも貢献できます。しかし、多くの人にとって、実際には、それ自体が施主の快適性や人生そのもの、自己実現、理想には直結しません。であればAI・IoTを組み込んだ『スマートホーム』との融合。『スマートライフ』といった概念を目指すべきではないでしょうか。ZEHはいくつかある選択肢の構成要素。これは「省エネ」という議論と同様です。業界横断的な連携はアイデアと理想実現の可能性を広げます。つまり、目指すべき、在るべき姿から現在を眺める。これが、ゼロ・エネルギーを伴った次世代住宅推進の鍵ではないでしょうか。広い視野をもって普及に臨んでいただきたいと思います。

なるほど。 重要なご指摘ですね。ありがとうございました。

※本記事は月刊スマートハウス別冊 『ZEH MASTER 2019』 に掲載したものより抜粋しています。