地方自治体

石川県羽咋市:北陸初、省エネ率70%超え公共施設にV2H導入 低炭素と防災の両立を体現

石川県羽咋市:北陸初、省エネ率70%超え公共施設にV2H導入 低炭素と防災の両立を体現

 石川県能登地方に位置する人口2万2,000人の町、羽咋市だが、 2018年10月に公民館を移転新築した『邑知ふれあいセンター 』を開設した。同センターは築50年以上が経ち老朽化が進んでいた旧公民館を建て直すと同時に、隣接する放課後児童クラブや地元消防団の車庫の機能も集約し複合公共施設として整備されたもの。多目的ホールには約260人を収容でき、授乳室や多機能トイレを設置するなど地元のあらゆる方が利用しやすいよう運用している。

 特長的なのが、同センターの省エネ 性能と防災性能の高さである。まず省エネ性能として、建物に高い断熱·遮熱等を施したほか地中熱利用の換気システムを取入れるなど省エネを駆使し、平屋の大きな屋根には太陽光発電 15kWを設置、発電した全てを建物内で使用している。結果としてエネルギー消費量を73%削減した環境性能の高い施設となっている。(前)生涯学習課の山岸厳之係長は「公民館として全国初のZEB Readyを実現している。実際にどの程度省エネに配慮したのか客観的な評価をとるためにも、第三者評価機関による評価制度BELSを活用し、 ZEB Readyの認定を取得した」とする。

 もう一つのポイントは災害時の避難所として防災性能が高いことだが、耐農強度は基準1.25倍の構造とし、吊天井の不採用。災害時優先電話の設置をはじめ、EVとV2Hによる長期停電時 の電力供給、貯水機能付き給水管による断水時利用など機能を充実させている。同市は比較的災害が少ない地域とされ災害の空白地帯とも呼ばれていたが、ここまで防災を意識したのは何故か。山岸係長は「今後50年以上施設を運営していく上で、‘‘想定外’'が許されないからだ。今までの考え方が通用しなくなっている中で、特に停電と断水については構想·設計段階から日常と非日常をより強く結び付けたカタチで取り入れていかなければならないと考えていた」と強調した。今回、羽昨市では非常 電源確保にEVとV2Hを選択したわけだが、電源毎の普段の使い方やコスト面を比較したという。一般的なディーゼル発電機はイニシャルは低いものの、普段使わない上、燃料劣化で数力月に 1回程度の交換など維持管理の問題がある。蓄電池は燃料不要だが、イニシャルだけでなく10年後の更新費用も考えると予算的に厳しい部分がある。そんな中、EVは普段は環境的で経済的なクルマとして利用できるだけでなく、非常用電源としてのコスパも良い。より実用的なソリューションとして公民館に V2Hを設置し、庁舎に40kWhの日産リーフ1台、バンタイプで12kWhのe-NVl台を導入。有事には駆け付けて活躍することが期待される。一方、水の確保に関しては貯水機能付き給水管を採用。1,000Lのタンク内の水は常に循環されるため、水の入替え等のメンテが 不要で、これも日常遣いができるものとして活用が期待される。

 事業化にあたっては「EVとV2Hに ついての提案・説明には注力したが、前例として環境と防災を配慮した中学校の建替えがあったため比較的スムーズ に進行した」とする。事業費は4億2,600 万円。このうち過疎債利用で国から約7割が賄われ、実質負担は約3割とする。今後は「日産自動車との北陸初の災 害時連携協定を予定する」という。羽昨市の取組をきっかけに北陸全体でも環境と防災による強靭なまちづくりが形成されていくことに期待したい。

※本記事は防災専門誌 『The Resilience(ザ・レジリエンス)』 No.2に掲載したものより抜粋しています。