インタビュー

パナソニックアプライアンス社:防災ニーズ捉えるエネファーム グループ網活用し規模拡大、累計20万台へ

パナソニックアプライアンス社:防災ニーズ捉えるエネファーム グループ網活用し規模拡大、累計20万台へ

 カンパニー制を敷くパナソニックの中で、家電や空調設備など様々な製品の製造を担うアプライアンス社(品田正弘社長)は、数少ないエネファームメーカーでもある。1980年代から開発に着手し、09年に初代モデルを上市。その後は集合住宅向けやLPガス対応モデルなどバリエーションを増やし、本体価格も補助金に合わせる形で年々低減させた。この間、他の参画企業は次々と撤退を発表するも、同社は開発を続け、様々な機能を付加しながら、当初300万円以上も要した機器費を今や100万円を切るほどまでに進化させた。販売台数も初年度の2,000台から現在は2.5万台規模/年にまで拡大している。ひたむきな企業努力の末、ここまで発展したエネファーム。しかし市場はここ3年、約5万台の踊り場状態が続いている。リーディングカンパニーとして、如何にこの膠着状態から脱却させるのか。スマートエネルギーシステム事業部の寺崎温尚事業部長に今後の戦略を訊いた。

高まるレジリエンス性ニーズに対応

 エネファームは発電・給湯の二役を担う。通常の給湯機にはない、この発電機能は予てより非常用電源として注目されていたが、寺崎事業部長は「昨今の連続的な自然災害により、俄然、関心度が増している。ハウスメーカーをはじめとする住宅事業者の方々は、改めてレジリエンス性に配慮した住宅づくりに注力しており、エネファームを標準採用頂くケースが増えている」と手応えを語る。今年度ラインナップした最新モデルでは、停電時に発電を継続する標準機能に加え、蓄電池との連携運転をオプション追加した。エネファームが長期間の電力供給(650Wで192時間)を担い、さらに蓄電池が瞬間的な出力(数kW)に対応する。この連携機能によって普段に近い暮らしを維持できるシステムを構築しており、これら背景や機能を含めたデザインが評価され2019年度のグッドデザイン賞も受賞している。

自社ルートを活用し、全国展開へ

 次代の住まいに求められるニーズを捉えるエネファームだが、市場が伸び悩む要因の一つが、大手事業者中心の市場状況であることが挙げられる。現状の主流プレイヤーは、メリットの出る料金プランを用意できる都市ガス会社や大手LPガス事業者、高所得者層をターゲットとするハウスメーカーなどが多い。それぞれが強力なルートであるものの、無論、さらなる普及を目指す上では、より広く市場を確立していく事が欠かせない。
 これに対し寺崎事業部長は「蓄電池やHEMSとの連携機能を強化していくことで、エネファームも当社が展開するソリューションの構成機器の一つとなった。これを武器にライフソリューションズ(LS)社やグループ会社の電材・建材ルートを活用した提案も強めていける」と戦略を語る。同社は同じ給湯設備として、エコキュートも製造しているが、オール電化にはエコキュート、ガス併用にはエネファーム、とケースに応じて使い分けられるソリューションの“引き出し”をサブユーザーに提供することで採用増を図り、次年度中に累計20万台を超える出荷を目指す。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.59に掲載したものより抜粋しています。