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建築環境・省エネルギー機構、省エネ政策から技術的知見まで 最新動向を共有

建築環境・省エネルギー機構、省エネ政策から技術的知見まで 最新動向を共有

 建築環境・省エネルギー機構(IBEC、村上周三理事長)は2月26日、省エネ住宅に関する政策動向や設計の最新知見などを共有する『自立循環プロジェクトシンポジウム2020』を開催した。新型コロナウイルスの影響を受けつつも、会場となったすまい・るホール(東京都文京区)には、約170名が参集した。
 開会に先立ち、東京大学の坂本雄三名誉教授が登壇。「戦後の量を補う時代から質を求める時代へとテーマが移り、建築物の省エネ基準やサステナブル建築、ZEHなど考え方が発展し、各種住宅設備や高断熱化など住宅関連技術も向上している。一方で日本は諸外国に比べ、住宅関係への投資が少ない。本プロジェクトでは、特に省エネ評価の確立に取り組んできたが、省エネに特化せず、暮らしの質向上とバランスさせ、環境関連の課題に広く取り組むことを期待したい」と挨拶した。続いて、国土交通省住宅局住宅生産課の成田潤也環境企画室長が建築物省エネ法について解説。改正前後の比較や説明義務制度、トップランナー基準など詳細に周知した。

 同シンポジウムは、IBEC、国交省国土技術政策総合研究所、建築研究所の3機関が連携し手掛ける『自立循環型住宅プロジェクト』の一貫として開催。研究機関や大学だけでなく、機器・建材メーカーや電力会社、住宅事業者など57社・機関が参画し、省エネに関わる設計技術や効果推計手法等の確立を図っており、そこで得た知見を共有する場として実施している。18年度からは業務用建築物も対象に加え、研究を進めており、今後について、建築研究所の澤地孝男理事は「非住宅については、単独では機能しない製品の組み合わせ方、複数製品の制御方法など設備に関する設計手法・規格の整備を進めていく」と方向性を示した。
 このほか、外皮やパッシブ設計に関わる知見も共有。外皮関連では、北海道立総合研究機構の鈴木大隆理事が省エネ基準やHEAT20などの水準を踏まえた上で、設備も加味した温熱環境の捉え方について、足利大学の齋藤宏明教授が気密性を高めるにあたり隙間が生じやすいポイント、さらに建築研究所の三浦尚志主任研究員が冷暖房の省エネ評価や断熱性能との相関関係などを説明した。設計面では、東京大学大学院の前真之准教授やYKK APほか、設計会社3社が温熱環境に関する知見を共有。「開口部を小さくするなどUA値を求めるだけでは暖かい家とならない」「日射取得も考慮したパッシブ設計で自然室温を高めることも重要」など設計時の注意点を強調した。最後にパネルディスカッションを行い、締め括った。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.62に掲載したものより抜粋しています。