ZEH・LCCM

秀光ビルド:価格・性能・安心を追求、ローコストビルダーの ZEH・IoT住宅への挑戦

2019/12/15 19:00

秀光ビルド:価格・性能・安心を追求、ローコストビルダーの ZEH・IoT住宅への挑戦

2019/12/15 19:00

 大手ローコストビルダーの秀光ビルド(本間航也社長)は「箸と茶碗があれば暮らせる家づくり」をコンセプトに、建築諸経費から各種保証、アフターサービスなど家を建てるために必要な費用を全て含めた『コミコミ価格』で住宅を提供、地域や条件によって異なるものの861万円~という低価格帯から提案している。まさにローコストな家づくりを手掛けているが、決して価格だけを追い求めているわけではない。制震ダンパーなどを活用し耐震性や耐火性に優れた住宅のほか、ZEHをはじめとする高性能住宅にも取り組んでおり、自社オリジナルの太陽光発電初期費用ゼロ円モデルを展開するなど、様々な戦略をもって、価格と性能のバランスを追求している。そんな同社が次なる付加価値として搭載する要素が􀀁AI・IoT􀀂。エナジーゲートウェイが提供するIoTプラットフォームを活用し、次代の住まいを提供するだけでなく、さらなる住宅事業の発展を狙っている。

性能・安心確保しつつ、徹底したコストダウン戦略で実績

 石川県加賀市に本社を構える秀光ビルドは、北陸地方からスタートし、今や九州・北海道など一部エリアを除き全国規模で事業を展開している。子育て世代がマイホームを持てるようサポートすべく、資材や設備機器の仕入れ価格を抑えるコストダウン戦略を徹底。さらに安心面にも注力し、カギや水廻り、ガラス、電気などの応急処置や補修対応を行う24時間365日駆付けサービスや、住宅設備に対する10年間の無料修理・部品交換修理保証、20年間計7回の定期メンテナンスなど様々なサービスを無償付帯している。加えて、デザイン面でも施主の要望に応じ、バリエーションに富んだ住空間を提案することで、着々と実績を積み上げてきた。今では年間2,900棟の供給規模となっている。
 低価格を維持しながら、多様な要素を付加する同社。特筆すべき点は多岐に渡るが、中でもエネルギー関連で言えば、太陽光発電の初期費用ゼロ円モデル『LOVEソーラー』を提供していることだろう。茨城県のスマエネ機器有力販売店であるスマートテックが展開する同モデルを活用し、住宅事業者でありながら自社サービスとしてラインナップしている。施主はスマートテックと電力契約を結ぶことで太陽光発電の設備費用を0円とすることができる、所謂PPAモデルだ。太陽光パネルは長州産業製を採用している。本間社長は「社会の方向性からZEHへの取り組みは必須。しかし太陽光発電をはじめ様々な機器を要するZEHはイニシャルコストが掛かるというイメージが定着している。これに対し、ローコストビルダーが取り組むことでどれだけ下げていけるかチャレンジしている。日本最安のZEHを目指している」と語る。ローコスト戦略を敷く同社ならではの一手と言えるだろう。

見える化、遠隔・音声操作に加え顧客管理も担うHEMS導入

 シンプルな価格戦略だけでなく、多彩なサービスを駆使することで、品質も提供している同社だが、20年1月より、新たにAI・IoTの要素を標準仕様化する。このほど搭載するシステムはエナジーゲートウェイが展開するIoTのプラットフォームを活用した独自のシステム。インフォメティス製の電力センサーを分電盤に装着し、専用アプリをダウンロードすることで電力の見える化や遠隔・音声操作を可能とする。電力の使用状況は、 AIが各家電の電力波形を計測することで、どの家電を使用しているのか機器単位で判別する。またスマートリモコン・スピーカーなどのIoT機器とも連携できるため、1つのアプリを起点に見える化から遠隔・音声操作まで可能とする。加えて、同システムは自社の顧客管理用にもコンテンツを用意。同社が発信したい情報をアプリ上で通知することができ、常に施主と繋がりを持てる仕様となっている。「お施主様毎に蓄積した電力の消費動向を分析した上で、省エネ機器の提案や太陽光発電の売電先のご案内などが可能となる。さらにはお掃除代行やポイント・クーポン提供など様々なサービス展開にも繋げられる可能性を秘めている」と強みを語る。

価格据置で標準搭載化へ

 このほど搭載するシステムは価格据置で標準搭載するとしている。施主だけでなく、自社にもメリットのあるシステムとしたことで実現させているが、利益が圧縮されていることに変わりはない。これに対し本間社長は「まず標準搭載化することで、量を確保できるためスケールメリットによってコスト低減を図ることができる。とは言え、それでも利益減を免れないのは事実。ただ数を集めることでビッグデータとなり、これを活用することでより精密に家計診断ができる様になる。お施主様にとって有効的なアフター提案が可能となることから、強力な販促ツールになると考えている」と将来を見越した先行投資であることを示す。続けて「決して安売りをしているわけではない。当社にとって、適正な価格で提供している。1棟1,000万円を切るビルダーでもZEHやIoTなど最先端の性能が備わっていることを認知させていく」と意気込みを語る。
 今期は3,000棟/年を目標とし、太陽光発電の搭載率においても現状の平均10%程度から、PPAの活用や防災ニーズに乗じて30%へ向上を目指している。ローコストビルダーがZEHやIoTに取り組まなければ、一層の普及が見込めないことは言うまでもない。挑戦を続ける同社の今後に注目される。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.59に掲載したものより抜粋しています。