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【特集】第5回D-1グランプリ:長府工産、猛追みせるも 157億円で高島がトップ保持

【特集】第5回D-1グランプリ:長府工産、猛追みせるも 157億円で高島がトップ保持

 販売店編に続いて商社編の売上高ランキングとなる第5回D-1グランプリの結果を集計した。映えあるトップは昨年に引き続き、 高島が保持。前回2位に浮上した長府工産が、この勢いのまま首位奪還まで達成するかとも思われたが、惜しくも届かず2位となった。スマエネ機器販売店に続き、トップ商社の動向を纏めた。

新築分野、卒FIT開拓で 各社拡販狙う

 既築向けをメインとするスマエネ機器販売企業とは違い、ビルダーや工務店など住宅事業者向けにも商材を卸す商社は、言わずもがな新築向けの提案も担っている。防災ニーズが高まっているとはいえ、機器単体を提供するだけでは採用されず、各住宅事業者の住まいづくりを考慮した提案や工夫が求められる。
 例年、トップをひた走る大手建材商社の高島(高島幸一社長)は、その地盤から新築向けには強固なルートを構築済みであり、寧ろ有力スマエネ販売店など既築向けの商流を築き上げていることが大きい。提案型商材である太陽光システムにいち早く取り組み、メーカーや下流の流通業者とともに事業規模を拡大させていった。無論、様々な施策も講じており、現在は災害に対する蓄電池の10年補償や既築太陽光システムへの最大10年補償など、さらなる安心性向上を図るサービスなどをもって販促に繋げている。一方、既築向けに強力なルートを保有する長府工産(伊奈紀道社長)は、これまで積み上げてきたスマエネ機器提案のノウハウを活かし、新築分野を開拓。ZEHに要する機器をはじめ、現在は自家消費提案に注力し、蓄電池はもちろん、ヒートポンプ式床暖房も含めた提案を行っている。自家消費に向かっている中、蓄電池や蓄熱機器としてエコキュート等が注目されているが、ZEHをはじめ高気密・高断熱住宅が増えている背景を活かし、住空間への蓄熱を勧めている。無論、頭寒足熱で快適な温度環境を整えられることこそ強みであり、住宅事業者に好評を得ているという。新築分野の開拓が奏功し、太陽光+蓄電池の売上高は17年度比約50億円増の150億円に到達。高島と肩を並べた。スマエネ販売店ランキングと同様、次回はどちらがトップを獲るか予想できない状況となっている。
 トップ3に入るユアサ商事(田村博之社長)は、卒FITユーザーが現れ始めた11月より、卒FIT太陽光の余剰電力を高額で買取るサービス『ユアプレミアム』を開始。蓄電池とAIによる電気代抑制機能を搭載したNTTスマイルエナジー製のモニタリング機器の導入を条件とするも、買取価格は全国一律20円/kWhと業界最高値のプランで拡販を狙っている。蓄電池はオムロン製を用意しているが、今後も追加していく予定。FITを卒業するユーザーが益々増加していく中、強力なプランを展開する同社の動向も見逃せないだろう。また蓄電池販売で急成長を遂げ、ランキング上位に食い込んだサカイガワ(佐藤隆社長)は、11月より新たに自社ブランドの蓄電池をリリース。10kWhの大容量、200V出力対応などの仕様で、自家消費促進や防災ニーズを捉える。新製品含め、年間7,000台以上を標榜しており、得意分野で更なる拡販を狙う。
 産業分野でも多くの実績を挙げるエクソル(鈴木伸一社長)は、太陽光パネルを1枚から設置可能とする『ジャストコンパクト』の販売を開始。“ちょうどいいサイズ”をコンセプトに初期費用を抑えた上で、電気代削減等に繋げるシステムでビルダー・工務店ルートを開拓していく構えだ。
 このほか、ナイス(杉田理之社長)では、 ZEHやIoTなど高性能住宅を構成する機器を一括提供するパッケージプランが好調であり、現在300社程度が利用しているなど、各社独自の商品・サービス戦略をもって事業拡大を図っている。
 新築・既築両分野の流通を手掛ける彼らの活躍が、住宅業界の省エネ・高性能化を浸透させていることは間違いない。太陽光市場が減少傾向にある中、トップ企業が織り成す、アイデアや戦略に期待が掛かる。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.59に掲載したものより抜粋しています。