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池田建設:経営好転したゼロエネ建築、地域性強化にパッシブ設計提案も加速

池田建設:経営好転したゼロエネ建築、地域性強化にパッシブ設計提案も加速

 茨城県で年間20棟規模を供給する池田建設(池田泰裕社長)は、ローコスト住宅からゼロエネ建築に切り替えたことで、ユーザー満足度アップ、紹介受注率アップ、売上高アップの好循環ビジネスを続けている。無論、やみくもに性能を上げただけのゼロエネ建築ではなく、地域環境に沿って日射や通気等を考慮したパッシブ設計を施し、地域に根差したオリジナリティのあるZEHとして提供している。

創業40年の大工集団

 創業40年、茨城県の鹿行(ろっこう)地域で注文戸建住宅を手掛ける地場ビルダーの池田建設。もとより腕のある大工集団として新築やリフォームをはじめ、地域の神社修繕等にも関わるなど地元の雄として展開してきた。2代目となる池田社長からは、更なる事業拡大のため商品化住宅に着手。社長自ら住宅の商品化に関する情報や知識、ノウハウ等の収集に動き、そうして辿り着いたのがローコスト住宅であった。年間数棟規模であったものが一気に20棟規模まで拡大し、堅調推移そのものだった。しかしながら当然、ローコスト住宅市場では熾烈な価格競争が繰り広げられ、物流の合理化等の方法を駆使したフランチャイズなどが有利に働く。多売薄利の中で体力消耗戦に巻き込まれていき、このほかローン審査が通らない客層も増えるなど事業が不安定化した。
 そこで、ローコスト住宅販売事業からの脱却を図りゼロエネ建築へと大きく舵を切った。2012年のことだった。「もともと高気密・高断熱の知識、ノウハウがあったが、それを前面に打ち出すようにした。更なる差別化には太陽光発電を搭載し、余剰売電制度がスタートしたことも幸いして上手く波に乗れた」と池田社長。こうしてターゲットを中高所得者層へ切り替え、早くから経済メリットや、健康・快適などを訴求してきた。腕利きの自社大工が丁寧に仕上げる住宅だけあって、ユーザー満足度も高く、紹介受注は5割以下だったものが8割~9割をキープするまでになり、好循環を生んでいる。安定した経営に転じたわけである。

提案する上で重要視するのは、まずは“体感”させること

 ゼロエネ建築については現在、UA値0.46W/㎡・K以下のHEAT20 G2グレード、C値0.5㎠/㎡以下の外皮性能を標準仕様としている。太陽光発電の搭載容量においては4.5kW以上が多いとする。すでに50棟以上のZEHを供給してきた同社だが、提案する上で重要視するのは、まずは“体感”させることであるという。本社には体感ハウスを併設しており「肌で感じることが最も効果的。夏・冬の高気密・高断熱の住み心地を実感してもらうことから訴求が始まる。春・秋の体感が難しい季節にはメーカー協力のもと断熱体感施設に案内している」とする。その後、太陽光発電の電気代削減によるコストメリットを説明するが、イニシャルコスト等を気にする施主には、太陽光発電の初期設置費用が要らないLIXIL TEPCOスマートパートナーズの『建て得』を活用している。同サービスによる設置実績は20棟を超す。
 今後は更なる外皮の高性能化を進めUA値0.40前後の標準化を目標とする同社だが、付加価値のポイントは高断熱だけに留まらない。「ひたすら高断熱化を進めたところでオーバースペックとなり、コストも上がるばかり。むしろ付加価値として太陽の光や自然の風を上手く取り込むパッシブ設計により傾注していく。地域ごと、住む場所ごとの太陽高度や風配図を見ながら、一棟一棟の外部環境に配慮した設計・施工をフレキシブルにできるのは地場ビルダー・工務店だと考えているからだ」と強調する。停滞し行き悩む住宅事業を盛り返す可能性を秘めるZEH。取り組まない手はないだろう。

※次代住宅専門誌『月刊スマートハウス』No.57号より抜粋