「令和元年度 新エネ大賞」金賞となる経済産業大臣賞を受賞するなど日本最先端の次世代電力エネルギーシステムとして注目を集める宮古島VPP実証。その実現には、太陽光発電の主力電源化を推進するネクステムズ比嘉社長、日新システムズ竹内社長の出逢いとアツイ想いがあった。業界初収録となる開発秘話に迫る。※敬称略
―現在、どのような実証を行っているのですか?
また、両者の協業経緯を教えて下さい。
比嘉 太陽光発電の主力電源化を目指すべく宮古島にて宮古島未来エネルギー(MMEC)、宮古島市、ネクステムズ、三菱UFJリースの協働で「再エネサービスプロバイダ(RESP)事業」を行っている。ここでは市営住宅に第三者所有で太陽光発電、エコキュート、蓄電池、EV充電器等を無償設置し電力の自家消費売電や温水熱販売、さらには常時遠隔監視・制御することで需要形成を自在とする地域アグリゲーションの実証・確立を目指している。宮古島に12あるプロパンガス事業者に呼びかけるなど太陽光をメインの電源としたエネルギーサービスを行う企業も募集し、地域の方々が自分たちで地産地消でき「太陽光は設置すればあとはメンテナンスフリー」ではなく、しっかり維持管理しながら地域でエネルギーを長く供給していけるような環境を構築していきたいと考えている。
―地域分散電源、
まさに次世代インフラの構築を進めている訳ですね。
比嘉 ここまで足掛け4年。振り返ると当時は太陽光の余剰電力でエコキュートを昼間に稼働させること等は基本的にご法度。関連技術を持つメーカーもいなかった。そこで通信規格に注目した。ちょうど私が沖縄電力グループに所属していた際にお付き合いがありECHONET規格の立ち上がりから研究を続ける日新システムズさんに「是非、遠隔監視や制御できるゲートウェイを開発してほしい」と頼んだ、というのが協業の経緯となる。
竹内 当社は組み込みシステム開発を主業にしているが親会社の日新電機は重電機器を手掛けている。09年に経営企画の中で両者にシナジーのあるエネルギー分野を軸にすることが決まった。日新電機は高圧領域を、当社は家庭の省エネに着手した。機器制御やネットワーク技術を活かしHEMSメーカーとして住宅事業者を中心に展開してきた。この中でECHONETが登場。東日本大震災によりエネルギーに対する世間の関心も高まっていった。その矢先に比嘉さんとご縁があった。フィールドに意識がある方と共に動くべきだと考えた。
比嘉 第三者所有は設備全てが屋外であるためコントローラが宅内にあるとアクセスできなくなる。そこで「屋外に置くコントローラ」が必要だとテーマに掲げ、当初5社が開発に携わっていた。その中で、筐体を独自開発され、誰でも手軽に採用できる製品を完成しきったのは日新システムズさんだけだった。屋外に設置するという環境は、常時パソコンを屋外に出しているのと同じイメージ。雨風に晒され非常に厳しい状態である。また安価であることが大変重要だった。高度な制御機器は確かにリアルタイム性といったメリットもあるが通信料やクラウド費用を誰が負担するのかという問題が生じる。当然、全国民の託送料金に含まれることが想定された。コストが安く丁寧なものを作ろうとすれば、地域の事情に合わせながら全体でうまく調整しなければならない。ただ、これまで私は電力設備を中心に扱ってきたため家電制御やクラウド構築、現場の課題がわからなかった。そこで密に開発を進めるべく日新システムズさんに「再エネのコントロールと家電マネジメントをしていきたい」という趣旨で16年に出向を依頼。分厚い書類を持っていったのに、ものの数分。一つ返事で快諾いただけたことは嬉しかった。
竹内 それまでライフクオリティを下げない省エネを考えていたが「大規模で継続可能な省エネ」という発想は目から鱗だった。培ってきた技術を展開するのはここだと直感した。その後、弊社社員を出向させシステムを作り上げてきた。HEMSからCEMSへ。コミュニティーEMSの雛形がビジョンとして見えてきた部分もある。他のVPP事業でもお声がけいただけるなど、協業の中でパワフルなプロダクトになってきた。
比嘉 この相乗効果の中でなければ構築できなかった。他のところであれば数年かかっていたと思う。16年時点では電力会社が太陽光の第三者所有モデルを手掛けるということは考えられなかった。それを加速したのは間違いなくこの連携があったから。家電が壊れてもゲートウェイは無傷なほど強靭な仕様だけでなく上位システムまで完成できている。さらなる関係性強化を図るため19年10月には宮古島未来エネルギーに資本参加してもらった。引き続き進化させていきたい。
―まだ進化するのですか?
比嘉 まだまだこれから。狭い領域のグリッドと接続して制御することを計画している。宅内は攻めていかなければならない。できるだけ太陽光を直接自家消費したい。蓄電池は容量が限られているため昼間太陽光で発電するものを直接消費していくようなHEMSの機能が必要。例えば夕方帰宅前で発電しているうちにクーラーで予冷しておくというような。宅内を最適化しながらエネルギーバランスを考えていきたい。
竹内 HEMS開発に着手した際のコンセプトであったQOLがようやく両立できてきた。最終的にはスマートシティの構築にまで繋げたい。エネルギーを軸に介護や見守りなど今後手掛けていく実証実験の中で様々なアプリケーションを実装していく。
―どのように普及していく?
比嘉 例えば電気自動車の充電対策。各企業でEV保有率が上がってくると、帰社した夕方から一斉に充電することになり電力ピークが発生、電力網はもたなくなる。それをうまく調整する際にゲートウェイが必要となる。また太陽光をエンドユーザーに販売していた専門事業者は第三者所有モデルを活用してその地域で再エネを最大化する主役に近い存在にもなり得る。元手がなくても参画できるスキームも構築中である。そのほか少し先になるが電力会社が第三者所有を本格化したとき。プロパンガス事業者が新たなビジネスとしてなど。繋げて制御できるツールとして屋外型ゲートウェイは必須アイテムとして普及していく。
―最後に一言お願いします。
竹内 既にお声掛けいただいているが、他実証と連携していくなどで地域マイクログリッドの完成形を国内で実現させたい。また系統とのバランスも含めシステム化したモデルを海外まで展開していくことを構想している。
比嘉 将来的には自治体でエネルギー課を持ちエネルギー流通を見ていくようなセクションができるのではないかと想像している。繰り返しとなるが、地域のなかでメンテナンスを行い長生きさせながら地域の電源を支えていける分散型電源に向けた取組を加速・推進していきたい。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.62に掲載したものより抜粋しています。
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2024/10/20 0:00
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2024/7/10 0:00