非常時の対応力に優れることが容易に想像できるレジリエンス住宅だが、「実際、どの様に動くのか」などの疑問は、体感しなければ払拭できないだろう。そこで本頁では、蓄電池やV2Hまで組み込んだ住宅を積極的に展開するセキスイハイム近畿の協力を得て、同住宅に住まう施主さんの体験談をお伝えする。今回は、各地で停電を引き起こした台風21号(18年9月4日上陸)襲来時の状況や停電発生直後の各設備の働きについて語ってもらった。伺ったのは18年5月に建て替えたばかりの川井さん宅。5kWhの蓄電池が早々に大活躍し「災害に強い住宅にしておいて良かった」と笑顔で語る奥様が印象的であった。
―当時の状況をお聞かせ下さい。
川井さん 21時~22時の間でした。家族みんなでテレビ観賞している時に突然、テレビや照明が消えました。すぐに外を確認すると辺りは真っ暗。停電だと認識しました。ここは高台で辺りを見渡せる位置にありますので、別の街区では一部明かりが灯っていることも確認でき、停電はこの一帯だけであることを把握しました。ただ、そうこうしているうちに電気がつき、すぐに復旧したものと思ったのですが、再度外を確認すると辺りはまだ暗闇。自分の家だけが電気を使えていることに気づきました。停電から復旧まで10秒程度だったでしょうか。(特定負荷分電盤のため※1)一部点かない場所もありましたが、重要な設備はいつものように使用でき、全く不自由なく過ごせました。後日、美容院でこの話をすると、その日は4時間ほど停電していたとのことです。暑い日だったので、小さなお子さんが居られるご家庭では「冷蔵庫を開けてはダメ」など注意していた様です。うちでは普段通り電気が使えたため、そんな心配はありませんでした。停電時の動き方については、予め説明を受けたものの、自動で復旧することもあり深く理解はしていませんでした。機械は苦手ですし、経験していないため、イメージするのが難しかったのです。そんな中、停電に直面しましたが、何一つ操作せず、停電モードに自動で切り替わっていた。このとき「この家にしてよかった」とありがたみを強く感じました。
―万が一の備えがいきなり役立ったわけですが、防災を考えて建て替えられたのですか?
川井さん 経緯は近いものがありますが、ここまで防災について考えていたわけではありません。以前の住宅は寒く、玄関からの浸水や一部では雨漏りも起こっていました。さらに家自体が傾き、ボールを置けば転がってしまう状態。安心できない家であったことや、不満な点を解消したく建て替えを決めました。そこで次に家を建てるときは、信頼できるところで建てたいと思い、セキスイハイムさんにお願いしました。防災について意識したのはセキスイハイムさんから提案されたのがキッカケです。モデルハウスの見学などを通じて、安心で快適な住まいの要素として『快適エアリー※2』や、太陽光発電システム、蓄電池を紹介してもらいました。ただ私自身、興味が沸いたのは『快適エアリー』と太陽光発電システムまでで、正直なところ蓄電池までは必要ないのではと思っていました。そんな中で蓄電池まで導入した決め手はローンシミュレーションと主人の一言でした。これら設備を設置しても、売電収入や高断熱仕様による省エネ効果から、月々の支出額は以前の住まいと大きくは変わらないと示して頂いたこと。 また職業柄機械に強い主人が「太陽光発電システムを付けるならば相性の良い蓄電池も設置しよう」と判断し、導入に至りました。その矢先に停電が発生し、蓄電池が大活躍してくれた。最終判断は主人に委ねましたが、結果的に良かったと思っています。
―非常時に電気が使えることについて、特にどの点が良かったですか?
川井さん まず私自身助かったと思えたのは、冷蔵庫が使えたことです。あの日は特に暑く、食材をダメにせずに済みました。またエアコンを使えたこともありがたかった。今まではすぐに蒸し風呂状態になっていたところ、本当に普段と変わりなく快適に過ごせました。子どもたちはスマホの電池を気にせず使える点も安心できる要素と言っています。また以前の住宅では予報があるたびに不安になり、外出先で雨を確認すれば「また雨漏りしているだろうな」と気分が沈みました。そして案の定、帰れば家の中は水浸し。とても憂鬱でした。現在はもちろん、そんな心配はなく、さらに停電時にも電気が使えることを体験できたため、今後は過度な不安を持たなくても良いと考えると、気持ちも楽です。
―ご家族やご友人など周囲の方が家を建てられる際には、オール電化+レジリエンス住宅をオススメしますか?
川井さん そうですね。実際、長男は家を建てる際には「同様の防災住宅にしたい」と言っています。日々の過ごしやすさもポイントです。暖かい住空間はもちろん、IHは掃除がラクで、見た目はスッキリ。料理もしやすいです。エコキュートは電気代を抑えられる点で季節に関わらず気兼ねなく使えます。また非常用水にもなるというのですから、とても好感を持てます。これらは説明されただけではイメージしにくい。まさに私自身がそうでした。ですが、体感することでその有用性をしっかりと理解できました。これを踏まえて、オススメしたいですね。
―実際に体験された方だけに説得力が違いますね。ありがとうございました。
※1 停電の際、予め計画しておいた特定の設備・機器に電力を供給する
※2 床下に設置した機械から全室に設けた給気口を通じて、全部屋に冷・暖気を供給できるセキスイハイムのオリジナル空調システム。
※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.56に掲載したものより抜粋しています。