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【News Release】旭化成:旭化成と奈良県立医大、226 nm UVC LED による新型コロナウイルス不活化効果を確認 動物細胞への影響についても検証

2021/6/11 18:00

【News Release】旭化成:旭化成と奈良県立医大、226 nm UVC LED による新型コロナウイルス不活化効果を確認 動物細胞への影響についても検証

2021/6/11 18:00

発表日:6月11日
発表元:旭化成
表 題:旭化成と奈良県立医大、226 nm UVC LED による新型コロナウイルス不活化効果を確認 動物細胞への影響についても検証

 旭化成株式会社(本社:東京都千代田区、社長:小堀 秀毅、以下「当社」)は、公立大学法人 奈良県立医科大学の微生物感染症学講座(矢野 寿一教授)および同大学免疫学講座(伊藤 利洋 教授)と連携し、226 nm UVC LED による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果の 確認と動物細胞への影響について検証を行いました。その結果、226 nm UVC LED が、新型コロ ナウイルスを速やかに不活化することができ、かつ動物細胞への影響も既存の 270 nm UVC LED に比べて少ないことが、世界で初めて確認されました。
 
【背景】
 世界で新型コロナウイルスの感染拡大が進む中、薬剤を使わない殺菌手段として、紫外線照射 による殺菌が注目されています。しかし、従来の水銀ランプ(波長 254 nm)や UVC LED(波長 260-280 nm)では人体細胞への影響が懸念されるため、人体へ直接照射することは避けられてき ました。

 一方、昨年エキシマランプを用いた波長 222 nm の紫外光照射器製品が発表され、人体 にほとんど影響がないことから、実用化が進んでいます。しかし、白熱電球や蛍光灯が LED に 置き換わってきたように、エキシマランプもレイアウトの自由度向上、小型軽量化、耐衝撃性向 上、ON/OFF の高速性などの観点から LED 化することが強く望まれています。
 
 当社では、すでに事業化している 260-270 nm UVC LED 技術を活用し、短波長化の検討を進 めてきました。このたび、開発中の 226 nm UVC LED を用いて新型コロナウイルスの不活化と 動物細胞への影響について検証を行いました。
 
【実験内容】
 今回の実験では、発光波長 226 nm の UVC LED を 100 個用いて 10x10 のアレイ状照射器を作 製しました(図1)。また、発光波長 270 nm UVC LED 製品のアレイ状照射器も比較として用い て実験を行いました。なお、本実験に用いた UVC LED は、すべて米国 Crystal IS 社※1 の窒化ア ルミニウム(AlN)基板を用いて作製されています。

1. 新型コロナウイルスの不活化実験
 シャーレに新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)液を塗抹した後に乾燥させ、226 nm およ び 270 nm のアレイ状照射器を用いて、同一の発光出力(440 μW/cm2)で紫外光を照射し ました。その後、ウイルスを回収して、ウイルス感染価をプラーク法※2にて測定しました。 その結果を図2に示します。新型コロナウイルスは、226 nm、270 nm のいずれにおいても UVC LED 光を 6 秒程度照射することで、99.9 %まで不活化されることが確認できました。

2. 動物細胞への影響評価
 226 nm の UVC LED 光が動物細胞へ与える影響について、マウス皮膚細胞を用いて検証 実験を行いました。図3に検証実験の流れを示します。マウス皮膚細胞を 2 層にした状態で、 226 nm および 270 nm の UVC LED 光を 100 mJ/cm2、500 mJ/cm2 照射し、上層の細胞を 除去した後、下層細胞に対する細胞傷害性を MTT 試薬※3による染色像と吸光度測定による 細胞生存率で評価しました。染色像の黒く見える部分が、細胞の生存を示しています。図4 と図5に示すように、226 nm においては、100 mJ/cm2 の照射による影響はほとんどなく、 500 mJ/cm2 の照射を行っても 270 nm に比べて下層細胞に対する細胞傷害性が低いことが 示されました。

【結果のまとめと今後について】
 以上の結果から、226 nm UVC LED は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を速やかに不 活化することができ、動物細胞への影響も既存の 270 nm の LED に比べて少ないことが確認で きました。これは 226 nm UVC LED が手指や体の周辺殺菌にも安心して使用できる可能性が あることを示しています。今後、製品化のためには、さらに発光出力向上のブレイクスルーが 必要であり、当社は引き続き研究開発を進めていきます。
 
【追加情報】
・全試験は、奈良県立医科大学内のバイオセーフティレベル3(BSL3)の実験施設において、 適切な病原体封じ込め措置のもとに行いました。なお、浮遊するウイルス、人体への影響に ついては検証を行っておりません。

・実験に用いた新型コロナウイルス;SARS-CoV-2; 2019-nCoV JPN/TY/WK-521 株

・公立大学法人 奈良県立医科大学
 理事長・学長:細井裕司(ほそい ひろし)
 創立:昭和20年4月
 所在地:奈良県橿原市
 
 医学的知識をすべての産業に投入してイノベーションを起こす MBT(Medicine-Based Town、医学を基礎とするまちづくり)構想の展開を進めている。

※1 Crystal IS 社:旭化成の 100%子会社(本社:米国ニューヨーク州)。設立は 1997 年(Rensselaer Polytechnic Institute からのスピンオフ)で事業内容は AlN 基板を用いた UVC LED の開発、製造・販売。
ウェブサイト:http://www.cisuvc.com/

※2 プラーク法:ウイルスに感染した細胞が変性することを利用したウイルス量の測定法。

※3 MTT 試薬:テトラゾリウム塩。ミトコンドリア中の酵素により還元されると発色する。

〔公式ページ〕
旭化成:旭化成と奈良県立医大、226 nm UVC LED による新型コロナウイルス不活化効果を確認 動物細胞への影響についても検証

※掲載テキストは発表情報の全文または一部抜粋です。元となるプレスリリースは発表元による発表当時のものであり、最新情報とは異なる場合があります。※詳細情報は公式ページをご参照ください