対談

【対談】高島×軒先:駐車場シェアビジネスで業務提携 ソーラーカーポート EV向け充電 インフラ拡充も視野に

2018/10/21 11:00

【対談】高島×軒先:駐車場シェアビジネスで業務提携 ソーラーカーポート EV向け充電 インフラ拡充も視野に

2018/10/21 11:00

 太陽光発電システムのトップ商社である高島(高島幸一社長)と空きスペースをオーナーから借り上げ、時間制で会員向けにシェアする"駐車場シェアリング"ビジネスで勢い付くベンチャーの軒先(西浦明子社長)が10月15日付で業務提携した。高島の持つ全国販売網を活用し、軒先が求める空きスペースオーナーの更なる獲得を目指す。高島としては、今回初めて、ハードビジネスからソフト面での販社向けサービスを展開することとなる。その先には、電力インフラの変革や、迫る車社会のEV化を見据えた協業の姿があるとする。

 今回、高島の山本明取締役と軒先の西浦明子社長が提携によるベネフィットや将来展望について語った。

 ――まずは業務提携に至った経緯からお教え下さい。

西浦 当社は空き駐車場の共有をビジネスとしているが、このようなシェアリングエコノミー事業は年間平均成長率が20%以上とされており、今後も無視できない市場になると認識している。しかし、まだまだ認知度は低く積極的に場所を提供して頂けるオーナーを探すのは困難だ。ネットワークを持っている高島さんと提携することで、サービスを拡大できる大きなチャンスとなる。

山本 高島は断熱材や太陽光発電など住宅用・産業用留まらずあらゆる建材を取り扱ってきた。いわゆる"モノ"売りを行ってきたわけだが、今回の提携を皮切りに、シェアリングという"サービス"取り扱うことになる。当社としては新たな試みであるが、ストックユーザーへのアプローチのキッカケとなるだけでなく、将来にはソーラーカーポートなど関係商材の販売にも活きてくるため、取引先にとっても面白い商売となるはず。会員件数を増やすことでオーナーの拡充に貢献するつもりだ。

――双方にメリットがあるというわけですね。では、具体的にどのような方向性で事業展開されるのでしょうか。

西浦 そういった販路を持たない当社からすれば大変心強い。軒先が抱えてきた課題は、何と言っても、空きスペース保有者の契約件数を増やし、会員へのサービス自体を拡大していくことにある。12年から始めた『軒先パーキング』の契約駐車場は現在7,500台で、その比率は個人:法人:集合住宅=4:3:3となっている。意外にも法人より個人が多い。そして、会員数は25万人と駐車場の数が会員数に追いついていないのが現状だ。会員のリクエストに応えられていない今、高島さんの販路によるオーナーの拡大には大いに期待させて頂きたい。

山本 全国各地に当社の販売先、そして顧客が存在している。焦らずに、まずは、東京で開催するセミナーを通して、北海道を除く7地域において、各地域3〜4社、施主へのアプローチの新たなアイテムとしてサービス活用を勧める。また、有力な太陽光発電システムの取引先50社にも呼びかけるつもりだ。

西浦 当社としては逆に、既存のカーポート所有の駐車場オーナーに、ソーラーカーポートへの変更を呼びかけたい。駐車場の付加価値を高められる上、EVとのシナジーも高いため、新たなビジネス展開の糸口となる可能性を秘めている。

山本 仰る通り、今回の提携で会員数の増加だけでなく、駐車場に充電ポイントやEVへの供給スポットとしての役割を持たせることもできると考えている。太陽光事業はパネルを売る段階から、蓄電池やEV連携などの次の段階に入っている。住宅も東日本大震災後は電気を使わず省エネ建材に快適性を求める風潮があったが、今年は特に気温が高く再エネの電気を使って快適性を求める風潮へと変化してきている。北海道地震のブラックアウトからも蓄電池や太陽光パネル、EVに助けられたという声もあった。この数年でEVを含めハードウェアの考え方が大きく変わっていく。その中で駐車場のシェアリングだけでなく、エネルギーもシェアリングの場になっていければ、社会的な意義の高いサービスとなっていく。

――空きスペースのシェアだけでなく、ソーラーカーポートを活用することでエネルギーもシェアすると。

西浦 今回の大規模停電では電力を分散化しておくことの必要性を感じた。一般の方が、電力の正しい在り方を意識し、環境や消費エネルギーに配慮した生活を見据えれば、駐車場自体がただ駐車するスペースであるのは勿体ないことに気付くはず。環境に優しいエネルギーを生み、空いている時間は貸し出して利益を得られる場所であるという、少し夢のあるパッケージになるような仕組みが作れたら―と考えている。

山本 今後、「どこで電気の供給を受けるか?」、また「どこで貯めるか?」、「どう持ち歩くか?」これらは、我々の暮らしと密接に関わってくる。住宅と車の関係が、電力の充放電で一本化されるなら、一気に連携の幅が広がる。EVの普及度につれて充電スポットの不足や、充電のための待機!というような状況が起こり得る。駐車中に充電が出来ると便利であるし、それが太陽光発電で作った電気であれば、とても環境に配慮した仕組みと言える。3年程度あれば、このようなEV向けのインフラが台頭してくるのではないか。

西浦 将来的に、EVに加えて自動運転も一般的となれば、車を所有する人が減り、空いている駐車場も増えてくる。共に意見を出し合いながらただ自動車を止めておく場所でなく、V2Hを設置することでEVの充電スポットや、ドローンの充電基地といった様々な充電ポイントとしての活用をともに目指したい。

山本 太陽光事業は断熱材や繊維、その他建材に負けず、今ではトップ商社として認知される程、当社の柱事業となった。しかし、ただパネルを売るというビジネスは、買取価格の下落を大きな理由に縮小傾向にある。いよいよ"モノ売り"ビジネスも、次のフェイズに入ってきている。軒先さんとの取り組みが、当社にとっても新しい商社の在り方を見い出す良いキッカケになることに期待している。

――ありがとうございました。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.45に掲載したものより抜粋しています。