ZEH・LCCM

【特集】P.V.ソーラーハウス協会:次代は「太陽光発電+蓄電システム」 自家消費型 ZEHで差をつけろ!

【特集】P.V.ソーラーハウス協会:次代は「太陽光発電+蓄電システム」 自家消費型 ZEHで差をつけろ!

 北の大地が一際賑わう『雪まつり』開催前夜。北海道札幌市ではZEH普及に向けた熱い議論が展開された。健康・快適、脱炭素化を伴った『21世紀型住宅』の普及を目指すP.V.ソーラーハウス協会(南野一也会長)は1月30日・31日の2日間にかけ、太陽光と蓄電機能を組み合わせた自家消費型モデルの動向および販売手法、道内トップビルダー達が打ち出すモデルハウス見学会を開催。最新情報を入手しようと全国各地の住宅事業者、総勢50名以上が会場に参集した。

発電した電力を宅内で消費、売買等価で経済性もアップ!?

 P.V.ソーラーハウス協会は97年設立のビルダーネットワーク。住宅事業者のトップ営業マンだった南野会長が脱炭素化の推進、地域の担い手達にノウハウ提供と啓蒙を図るべく立ち上げた組織である。爾来、関連資材の共同購買、次世代住宅普及を目的に全国各地でセミナーを開催。次世代工法、販売手法に加え、全国300社にのぼる会員企業とのディスカッションを通した情報共有で業界活性化に努めている。
 今回の研修会は「自家消費型ZEHをどのように展開していくべきか」というのが主なテーマ。開会冒頭、南野会長は「今後の住宅は需給一体、創蓄連携がキーワードになる」と強調。現在議論されている固定価格買取(FIT)制度の抜本見直し、再エネの主力電源化、大量導入&次世代電力ネットワーク、今春改定予定の『新ZEHロードマップ』等の政策動向を説明した上で「全ての事案には脱炭素化を背景とした再エネ拡大、需給革新、災害時のレジリエンス強化といった共通事項があり、その内容を無視して住宅の在るべき姿は議論できない。そして、新築業界で中心となっていくのが『自家消費型』である」と方向性を示す。これは通常のZEH(太陽光発電)に蓄電池や電気自動車&V2Hといった「蓄電機能」を組み込んだもの。読んで字の如くではあるが、発電した電力を宅内消費するモデルを指す。経済的な面で言えば、これまでFIT制度下での余剰買取価格が買電単価を上回ることで売電によるメリットが大きかった。一方で売電単価の低減に伴い、太陽光で発電した電力を蓄電する、または電気自動車に充電するなど宅内で使用(自家消費)する方が合理的≒お得な選択肢となる。加えて「太陽光+蓄電池」があれば停電時の災害対策にも繋がり理論上、売買する電気が等価以上となる。これらの流れを汲み取り、既に大手ハウスメーカーは定置型蓄電池や電気自動車+V2Hを組み合わせた商品群を打ち出し始めていることから「自家消費型ZEHの標準化は必須」と南野会長は繰り返し指摘する。
 無論、建築費用は上昇していくが「中長期的な新築着工の縮小は避けられない。市場で勝ち抜くには物件あたりの収益を向上させると共に上位顧客を捕まえておく必要があるのではないか」と見通す。自家消費型を展開する上で鍵となる「蓄電」に関しては蓄電システムだけでなく“走る蓄電池”を紹介。「出回りつつある『中古電気自動車+V2H』が安価で蓄電機能としての導入に期待できる」と話していた。

原価低減、工事費削減で建築費増加は怖くない

 とはいえ、残念ながら「太陽光発電が導入されないと蓄電池の営業すらできない」という問題がある。そこでセミナーでは改めて、太陽光発電に関する制度設計から脱炭素化の潮流で導入が加速する世界の状況、製品仕様分析といった盛りだくさんの基礎知識に加え、コスト削減方法を伝授。「建築費増=太陽光発電(ZEH)を提案しない」という根強い考え方の払拭にかかった。そして南野会長は問う。「投資回収が10年程度かかるモノに対しユーザーは魅力を感じるだろうか」と。確かに住宅用太陽光発電システム価格は19年時点でkWあたり約30万円を下回る水準に到達。新築・既築ともに年々価格低減が図られている。そこから更に一歩と言わんばかりに「経済産業省WGで議論されているように目標価格『20万円/kW』を早期に実現し差別化を図っていく必要がある。正しい知識とノウハウで原価低減することはビルダー、ユーザーともにメリットのある提案が可能になる」と説いた。そのポイントは「システム費用の約8割を占める太陽光パネルと工事費の削減」の2点にあるという。具体的な対策として①国内外問わず性能が高く保証内容が充実したメーカーを選択、②邸別ではなくパレット輸送にするなどでデリバリー費用を削減、③工事費に関しては自社施工、短時間+少人数でできる工法の選択、工程のマニュアル化を挙げた。こうすることで「太陽光発電の採用増加にともない必然的にZEH率も上がる。地域商圏で先進的なイメージが定着し、結果的に建築費用増により収益確保にも繋がる」との好循環サイクルを提唱した。

訴求ポイントは経済性と快適性、認知度低めは太陽光の標準化で

 では、『ゼッチ』はどのように提案すべきなのか。2日目はZEH市場の動向や提案方法が中心に語られた。昨年開催された調査報告会の資料を基に「成功しているビルダーは企業収益性の向上を理解しつつ顧客満足度を上げ、優良顧客の抱え込み、先進的な企業イメージといった活動を積極的に行っている。商品化の設定、メリット訴求が効果的に機能している」ことに言及。施主へのアンケート結果から「ZEH訴求ポイントは光熱費削減(経済メリット)と快適性である」と指摘した上で、大半のユーザーが『ゼッチ』という言葉を知らないという実態から「お客さんから話が出ないから提案しないという話をよく聞くが一般顧客は太陽光発電とZEHは別物だと考えているとみられる。であれば太陽光発電の提案を標準化していくべき」と結論づけた。経済メリットを上手く伝える方策としては「一般住宅と比べ月々の返済額がどのように異なるのか」といったコンテンツが盛り込まれた協会独自冊子を配布。地域別の経済メリット、費用回収年といった試算表を用い「ZEH提案は難しくない」ことを指南した。ZEH普及の伝道師。今月もまたどこかで布教活動を続けている。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.62に掲載したものより抜粋しています。