ZEH・LCCM

天領木:県産材活用で地域と連携しZEH推進

天領木:県産材活用で地域と連携しZEH推進

 県産材の活用や健康・省エネなど高性能に拘る天領木(荒川政勝社長)は、設立当初よりZEH水準の住宅を標準化し提案し続けてきた。他の地場ピルダーと比べ、棟単価は高額であったが、拘りを貫いてきたことで、今やブランドは浸透しZEH率も現在は100%となっている。

2つの震災を受け 省エネ・健康・高耐震を提供

 大分県を中心にZEHなど高性能住宅を標準仕様で供給する天領木だが、その背景には荒川社長の地域活性化と住まいにかける思いがあった。荒川社長は、 長年ハウスメ ーカ ーに勤務していたが「地元の林業高校出身でもあり、九州三大美林の一つである日田杉を使った家を建てたいと思っていた。また省エネや 高断熱・高耐震など前職で得たノウハウ を組み合わせ、高い性能、木の住まいの 良さを提案したく独立した」と語る。そんな思いで11年 3月10日から営業を開始したが、その翌日、東日本大震災が発生。「オープンイベントなどを用意し ていたが、ここ大分でもそれどころではな かった。その一方でエネルギー事情などが不安視され、当社が手掛けていきたい住宅の方向性は間違っていないと確信を持つことができ、より熱が入った」と振り返る。

 とは言え、高額となる高性能住宅。提案に際しては「国のエネルギー政策や補助金、税制優遇が用意されていることなどを順序立てて説明し、シミュレーションも提示することで理解を頂いている」とし、加えて「木の香りにはリラックス効果があり、杉には免疫力向上の成分も含まれている。他にも漆喰の壁や天井には和紙を用いており、自然素材による健康メリットも訴求している」と語る。断熱性能も含め、 構造材は後に変えが効かないことから特に拘りもって提案し、健康寿命の延仲による医療費削減の効果も説明することで成約に繋げている。

 順調に実績を積み上げてきた同社だが、今度は16年に発生した熊本地震に見舞われる。同社エリアでも大きな揺れを感じ連日余震が続いた。同社では筋交いのたすき掛けなど耐震性に配慮しており、幸い施工した住宅で被害は見られなかった が、震源地に近い地域では、想定外の規模により、木造軸組み工法の住宅では一部筋交いが損傷するなど被害を受けた住宅があった。そこで、LIXILが加盟店制で展開するスーパーウォ ール (SW) 工法を採用し、より高い耐震性能を確保。今では LIXIL TEPCOスマートパートナーズが手 掛ける太陽光発電の初期費用ゼロ円モデルも活用し、ZEH率の向上も図っている。また耐震性能の高いSW工法の特性を活かし、大屋根+ロフトを施すなど空間を生 かした間取りやデザインも提供している。

 「お施主様宅に遊びに行った地元の小学生が、ご両親に“あんな家に住み たい’'と言ったことがきっかけでご注文頂いたケースもあった」と笑顔で語る荒川社長。拘りを貫き、地元でのブランドを積み上げてきた同社だが、現状に満足せず、今後も IoTやEV·V2Hの活用、 LCCMなどまだまだチャレンジ意欲は尽きない。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.63に掲載したものより抜粋しています。