ZEH・LCCM

五光ハウジング:3電池連携の防災型分譲プロジェクト始動、無電柱化で意匠性にも配慮

五光ハウジング:3電池連携の防災型分譲プロジェクト始動、無電柱化で意匠性にも配慮

 神奈川県藤沢市に本社を置くZEHビルダー、五光ハウジング(石山辰巳社長)は、約30棟/年ペースで高性能住宅を手掛けている。このうち80%は分譲事業であるにも関わらず、19年度のZEH実績は25%と積極的に展開。さらにLCCM住宅など最先端の住まい提案にチャレンジしており、このほど太陽光発電、蓄電池、エネファームの3電池連携や無電柱化を施したレジリエンス強化型住宅にも乗り出した。同県海老名市において、12区画の分譲地をまとめてコーディネートし、1月よりモデルハウスをオープンしている。より良い住まいの実現に向け果敢に挑戦する同社の新たなコンセプト住宅に迫る。

3電池組み合わせ電力自給率86~88%を達成

 このほど防災強化型の分譲提案に乗り出した同社であるが、これまで18年には東京都町田市でLCCM住宅の分譲9区画、19年には地元藤沢市で4区画のZEH分譲など、高性能をコンセプトとした建売にいち早くトライしてきた。今回の『電気を買わない家』プロジェクトについて、石山社長は「大規模災害が増える中、災害に強い家や街づくりの担い手となるべく取り組んだ。LCCMやZEHなども防災力は高いが、東京・神奈川では、太陽光発電の容量を確保できないことや、立地・価格選好となりやすい建売事業において販売が難しい。そこで今回は“ZEH”といったブランドに拘らず、防災に特化することをコンセプトとした。最低限の太陽光発電とエネファームで電力を確保し、大容量の蓄電池でマネジメントを行う、関東型の防災住宅となっている」と経緯を語る。

 同プロジェクトでは全12棟に対し、大手木建商社ナイスの子会社で太陽光システムのメーカーポジションとして展開しているスマートパワー(田原武和社長)の防災機器パッケージを採用。同社製の太陽光発電3.6kWまたは4kW、パナソニック製エネファームと2つの発電設備に加え、デルタ電子製蓄電池11.2kWhを導入することで、電力自給率はいずれも86~88%を達成できると試算している。「設備については、スマートパワーさんにコストと性能のバランスをみて提案頂いたものを採用した。蓄電池は200V対応、かつ大容量であるため、家全体をまるごとバックアップできる。非常時対応はもちろん、日々の光熱費削減にも貢献する」と説明する。無論、躯体性能も確保しており、耐震等級3に加え、外皮はUA値0.68とZEH基準(6地域)に近いレベルとした。デザイン面でも、欧風な外観に加え、内観には木材によるあしらいを施し、木の温もりを感じられる空間を提供している。

街並みデザインにも注力、クルドサックなど一体感を体現

 さらに石山社長は「3電池連携だけでは、大きな差別化要素とはならない。そこで街並みの美観にも傾注した」と拘った点を明かす。中でも特筆すべきは、電柱を地中に埋設した無電柱化。耐震性に優れる配管を利用した地震対策、台風による電柱の倒壊を防ぐだけでなく、生活感を醸し出さない意匠性を実現した。加えて、共有敷地にはクルドサックと呼ばれる転回広場と植栽を施し、異国情緒が溢れた、一体感のある住宅街を演出している。

 各戸の延床面積は101~120㎡で、価格は太陽光発電の搭載容量や間取り、立地場所などにより異なり4,280~4,880万円。部材の一括受注など価格を抑える工夫も凝らし「スペックとコストを両立できた。防災意識の高まりもあり、お客様の関心度は高い。他県から見学に来て頂くケースもあり集客エリアが拡がっている」と自信を覗かせる。家単体の性能・デザインだけでなく、街並みにも拘り、差別化要素として提案する同社。「このスペックをベースにIoTを取り入れるなど、さらなるブラッシュアップを図っていく。価格ではなく技術で勝負していきたい」と意気込みを語った。

※本記事は次代住宅専門誌 『月刊スマートハウス』 No.63に掲載したものより抜粋しています。